基本法

「共生社会の実現を推進 するための認知症基本法」を 暮らしに活かし育てるために

更新日:2025年3月18日

第12回 1年間の連載を振り返り、わたしたちからの想い

2024年1月に「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が施行され、会報では1年間にわたり法律に関しての経緯、関わっている方の思い、支部や団体、企業で取り組まれている活動、今後の期待等を取り上げました。基本計画が公開され、本人、家族それぞれの期待や当会等活動を踏まえ、あるいは今までの活動の域を超えて理解が進むことが望まれます。記事を担当した会報編集委員会でもさまざまな思いを抱え記事に向きあいました。取り上げたテーマや記事について感想やこれからの願いなどをまとめ、2024年度の連載を締めくくりたいと思います。

法令化の不安と期待

会報編集委員長 芦野 正憲

2020年2月6日に国会内で「認知症基本法について考える院内集会」が開催され、与野党の国会議員、当会含めた当事者団体、関係者ら多くの方が参加し法令化への思いを伝える場となりました。新型コロナウイルスの感染者が日本で確認された時期でしたが、わたしも国会に足を運び当時代表の鈴木森夫氏から発言を聴き、要望書を手渡す場面を見ていました。

誰にも起こりうる出来事であり人権、声を聴くことに重点が置かれた法律は認知症の人もその家族等が自分らしく生きることができることを明記したものです。施行から1年経ちますが、連載テーマを探す中で社会全体に知れ渡っている感覚は残念ながら持てていません。特に地方の政治家の方々にはこれから育てる意識をともにもって取り組んでもらいたいという印象を強くしました。

本人と家族への調査を県から委託 「参画」の一歩に を読んで

会報編集副委員長 安藤 光徳

「認知症基本法」の基本理念の一つに「当事者参画」を挙げていることを大前提にこれからの「家族の会」のあり方を示唆する内容だったと思います。特に県の委託を受けて、広島県支部が取り組んだ認知症の人や介護家族
へのアンケートは「家族の会」が県に提案して実現したことは、県との良い関係性を再確認しました。その具体的な質問内容を「当事者目線でリアルなご本人・家族の思いやニーズをくみ上げる」ことをモットーに練り上げたことも記されていました。さらに、世話人の方々にとって初めてのことにもかかわらず、事前の研修会で、世話人同士が模擬インタビューなどを実施して調査を行ったことも支部の歴史の上に立った団結力を物語っていると感銘しました。

最後に執筆者の山内氏が結びの文章にしていた「主役である認知症の人と家族の参画が地域で問われる一年になると、身の引き締まる思いです」は、編集委員として、支部の世話人として「身の引き締まる思い」で読み終えました。

「基本」の「き」

会報編集委員 松本 律子

第2回の福祉ジャーナリスト町永俊雄さんの“それは「ボケても心は生きている」から始まった”というお話に感銘
を受けました。
そうだったなぁ。「家族の会」が生まれたのは1980年。その頃、介護の現場で、ボケていく利用者と接していて、受診した精神科医が「いや~僕は、よく分からないからなぁ」と言われて、戸惑ったことがありました。その後、「家族の会」に縁があって、早川一光先生等の講演や交流会、「つどい」で介護者のお話に触れる機会が増えました。
「ボケても心は生きている」は、「家族の会」の合い言葉であり、原点だと思います。

共に生き希望ある豊かな社会を認知症基本法から

会報編集委員 森川 隆

編集委員の窓2月号の記事を読み、共生社会の一端を垣間見る思いがしました。読みながらほっこりとした気持ちになれたのは、何気ない日常の会話を描きながら、そこに尊厳と希望が感じられたからだと思います。

私の住む四国にはお接待の文化が今も息づいています。助ける者が助けられるという文化であり、互いに支え合う喜びを持って生きることの大切さを教えてくれています。共に生きるとは、日々の生活の中にある喜びや悲しみを共有し、共にその中から大切な心を育み、希望ある未来を創り出すことだと思います。認知症基本法が示す共生社会の未来は、認知症から豊かな社会を目指す未来ではないかと感じています。

認知症の国家施策を誇りにこれからも発信する活動を

会報編集委員 鷲巣 典代

昨年1月の施行に続き12月には、基本計画が開始された「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」。
認知症の国家施策があるのは、WHOに 加盟している194の国と地域のうち48、その中でも、政策決定の過程に当事者が参画し、財源、達成目標とその評価を明記した計画を持つ国はほんの一握りに過ぎません。

40~50年前、認知症のある人々は、鍵のかかった部屋に閉じ込められ、病院のベッドに括りつけられていました。

今、認知症の人は、希望をもって生きるためのメッセージを社会に発信しています。

「共生社会の実現」という言葉は、45年余にわたって、国、当事者、現場、研究者等が一体となって認知症に取り組んできた努力の結実です。

人権を奪われていた認知症の人の苦しみ、その家族の辛さと先人の努力を思い、「共生」を実現する鍵は、私た
ち一人ひとりの行動の中にあるのだと、身が引き締まる思いです。

ベンチャー企業の参入に期待

会報編集委員 井垣 敦

 第11回の「認知症当事者の皆様と共に未来を創る」を読んで、若いベンチャー企業の方が認知症、そもそも高齢者に一段と寄り添った取り組みをされているのを見て、心強く感じます。

IT化等で物事が進む中、ショッピングモールでの実地体験も併せて、アナログとデジタルのハイブリッドの取り組み。これからのあらゆる分野でのベンチャー企業にも期待したいと思います。

(会報「ぽ~れぽ~れ」2025年3月号より)