目次
認知症の人の意思の尊重
1. デイサービスに行きたくない(二人の理由)
A さんは認知機能の低下があり家族は困って地域包括支援センターに相談。デイサービス(以後、デイ)利用が決まりましたが、Aさんは拒否し続けました。デイの職員はA さんになぜ嫌なのかを聞きました。「何でここに行かないといけないのか、私は人の世話になるようなことはない」でした。
B さんは若年性認知症の診断を受け退職しました。家族は退職による経済の不安定さとともに、混乱するB さんにどう接してよいか悩んでいました。その中で当会につながり、家に引きこもっていたB さんはデイを利用することになりました。若いので通常のプログラムでは難しいと事業所は考えてでしょう、窓ふきや下膳、洗車などをすることで利用が始まりました。
Bさんは納得できないも、家族に迷惑をかけているからと利用は続けました。
その後、障害サービスの利用も始まりました。そこでは、Bさんの思いを聴いてのサービス利用でした。
2. 本人の意思の尊重:「認知症基本法」・「認知症施策推進基本計画」では
認知症基本法の第3 条第1 項には「全ての認知症の人が、基本的人権を享有する個人として、自らの意思によって日常生活及び社会生活を営むことができる」と謳っています。国の基本計画の4では「認知症の人の意思決定の支援及び権利利益の保護」でその目標は「認知症の人が、基本的人権を…営むことができるよう認知症の人への意思決定の適切な支援と権利利益の保護を図ることを目標に」とし4つ施策が示されています。
①意思決定支援に関する指針の策定
②意思決定支援等に関する情報提供の促進
③消費生活における被害を防止するための啓発
④虐待の発生又はその再発防止等に取り組む、総合的な権利擁護支援策の充実等について検討する
となっています。
3. 認知症の人の意思を尊重するには新しい認知症観と対話から
2018 年6月策定された認知症の人の意思決定に関する指針「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援に関するガイドライン」は都道府県での研修が進められていますが、介護・医療現場等では十分に浸透しているとは感じえません。まだまだ「認知症の人に話してもわからない」があるように思います。
A さん、B さんの「デイには行きたくない」は、本人と向き合い話し合いを続け、思いを共有したことで解けていきました。
本人の意思の尊重は「新しい認知症観」と対話から始まると、認知症の人の語りは教えてくれていました。